あるアウトローの最後
前回では、私がアウトロー、始末屋になった過程を語るという形で終わったが、本当にそれはささいなことだったのだ。
昔から私は、どこか反社会的な所があった。暴力沙汰で高校はドロップアウトした。そんなころ、あるバイト先の友人が言ったんだ。
「ちょっとヤバイ話なんだけど、オレの代わりに電話をして欲しいんだ」
それが、彼女を寝取った話なのか、それとも借金がらみなのか、私には分からない。ただ、仲間の頼みだから請け負った。
侠、という言葉がある。「法に照らしあわすと正しくないが、自分が信じた正しい事に生きる人」くらいの意味だ。義侠心って言葉もある。私にあったのはそれだった。
得てして、それが過ちの始まりなのだ。ただ知り合いのために尽くしたいという気持につけこまれて、私達は破滅してゆく。
私はその後、柔術の道場を開き、色々な大会に弟子を出場させてた。それもまた、一つのきっかけだった。
格闘技の道場やジムが、実力を認められると、必ず怪しげな人間が接近してくる。逆に言うと、そういう輩がいる事が実力の証なのかもしれない。
「こいつら、喧嘩で使える」
そう思うとそっち筋の人間が近づいてくる。大手武道団体に必ず右翼が付いているのも、そういう事だと思っている。うちの場合は、練習生としてだった。
その人は自称アソビ人で、稽古に顔を出してもほとんど体は動かさない。なのに、私的にはひどく接近してきて、やたら師範や高弟たちと仲良くなりたがる。
そして飲みに誘い出しては、行きつけの店とやらに連れて行くのだ。
ここがポイントだ。行った先の店では、密やかなオーディションが行なわれている。店を仕切る人間が、こいつは使える人間かどうかと値踏みしているのだ。
私の高弟を例に出すなら、最初のテストは「迷惑な客」だった。
「酔っ払ったお客が、勘定を踏み倒そうとしてるんですよ。どうも性質の悪い人らしくて怖いわ」
そんな言葉が、連れて行かれた先のママから聞かされる。呑まされていい気になっているウチの弟子は、「義を見てせざるは勇無きなり」とばかりに、その客に向かっていき、腕づくでも勘定を払わさせる事となる。それがボッタクリの店であるとも気づかないで。
そうことして「いいこと」をしたい弟子は、「バイトしませんか?」という言葉に乗せられる。あるいは「タダにするんで、毎日呑みに来てくださいよ、怖いお客が多くって」ってな言葉に乗せられて。
彼はそのまま、自分では気付かないけど「脅迫者」になってゆく。ボッタクリの店だと知らないまま。
ウチの弟子の場合、最後には気が付いてしまった。ホステスの外国人女性に払っている金額も、言いがかり的に少ない金額だ。みんな暮らして行くのが精一杯と泣いている。
そして、彼はとうとう、まっとうなことをなしてしまった。ホステスたちに、募集時に提示された金額を払ってしまったのだ。紹介費やらペナルティやらの名目で、それまでは彼女たちの給料は大幅に引かれていたからね。
レジの中の金をホステス達にばらまいて、彼は店を止めた。
でも、それは終わりじゃなかった。いつまでもしつこく、彼は店が雇ったヤクザ者に追われた。一人二人は返り討ちにしたけど、最後には、明らかなクズレが手配されたって訳さ。
まったく、ひどいもんさ。
(※2004年1月20日分より転載)
2005年01月20日
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