2005年02月17日

アウトロー交戦記 第五回(寄稿:前原龍彦)

 いや、実に半年以上ぶりの更新になる。その間、何をしていたか? 戦っていたのだ。

 相変らず、万引きハンターこと私服保安員をしていたのだが、この仕事、実に色々な敵が居る。目の前の盗人Sだけじゃあないのだ。

 例えばマニュアルには、災害時の誘導が指導されている。恐らく、営業の人がこう言っているのだろう。「うちの隊員がいれば、地震や火事の対策にもなりますよ」

 そして、本当に起きてしまったのだ、火事が。


 今回の敵は、火事だ。これは怖い。なにせ防御も攻撃も効かないのだ。出来るのは回避する事だけ。

 だが、それでも戦わないとならない人間がいる。カート・ラッセルと私だ。

 なにせ、今回燃えたのは立体駐車場にある自動車だ。何がどうなっているのかは分からない。だが、とにかく私が店舗三階の休憩室から出た処で、向かいになる建物の中で、ハイエースが爆発したのだ。

 反射的に走った。なにせ運転席にはドライバーが乗っていたのだ。

 まずは制服警備員詰め所に走り、事態を報告。これで彼らが何とかしてくれるはずだ。

 と思ったのもつかの間、もうもうと上がる白煙を見上げて、ニヤニヤするばかりでなんの役にもたちゃしない。

 えぇい、時間が無いわ! 走ったね。すぐさま立体駐車場に乗り込んだんだけど、階段からフロアに上がった途端、物凄い煙だ。真っ白。まるで霧だ。

 どこに車があるかさえ分からない煙幕の中、それでも車の方に飛び込んだ。

 途端に視界が消失した。すごい、他の煙とはまったく密度が違うのだ。誇張抜きで、伸ばした腕の先が見えない。

 更に、見る見る酸素がなくなってくる。これは凄かった。灰の中に酸素があれば大丈夫だと思って、空気を沢山吸い込んでから飛びこんだんだが、まったく無関係に脳が勝手に酸欠になってゆくのだ。

 恐らく、一酸化炭素とか何かガスの類が、体内に侵入して脳を犯していっているのだろう。真っ白から真っ黒に視界がブラックアウトしてゆく。そう、かってしったる、締められて落ちるときの感覚だ。

 やばい! とっさに逃げる事も考えたが、目の前には、運転席で倒れている人の姿が浮かぶ。

 真っ白な視界。辺りからはボンボンと段発的に爆発音。そして消えていく酸素。ちょっとした地獄だ。

 そんな絶体絶命の中、頭に浮かんだのは、小学生の時の火災訓練。押さない、かけない、喋らない。そして口にハンカチを当てて、姿勢を低くしましょう。

 とっさにシャツを脱ぎ、口元に当てた。これが驚くほど効いた。有毒ガスが入ってこなくなったのだ。

 おかげで何とか、被災者を救う事ができた。良かった良かった。


 次の日、たっぷり毒を吸ったせいかひどく気分が悪かったが、とりあえずは良かった。

 ちなみに、報告をした後の会社の対応は、「火事? そんなんで二次災害になったら労災が大変だろうが。ほっとけよ!」


 経営者のみなさーーーん!! 制服も私服も、警備員なんて火事の時には役にたちませんよーーーーーーー!!!!!

(※2004年11月21日分より転載)
posted by 久遠 at 22:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | アウトロー通信
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。