2005年05月15日

アウトロー見聞録 第六回(寄稿:前原龍彦)

 さて今回は、さまざまなダメージの話。

 中国の友人に、「中国拳法しない?」と訊いたら、こんな答えが返ってきた。

「拳法は内力があるから、内傷を負うので怖い」

 武侠小説と呼ばれる拳法作品の中で、そういう常識があるのだ。内側の力を発揮して、体内にダメージを与える。その時、直接打たれた外面には、痛みはまったく無いが、最悪生涯治らない状態になるという。

 ウソのような話だが、この内力、実在するのだ。一部の中国拳法では公開され、教伝されている。さらに言うと、この前原も少しだけできる。

 もちろん、私の内力はまだ開発中で、威力自体は充分にはない。だが、いわゆる空手式のパンチとは、ダメージの質がまったく違うのだ。


 内力は、まるで走ってくるスクーターにぶつかったような物で、「あ、ぶつかった」と思った後、フワっ、と体全体がもっていかれるのだ。まるで後ろから引っ張られたように。

 そのため、事故と同じく首がゆすられて鞭打ちのようになる。さらに力が強いと、脊椎が損傷する。これが生涯治らない内傷だ。

 より上手く打つと、全身ではなく、内側だけが引っ張られる。その時、まるで内部にゼリーがあるような感じがして、それが激しく波打つ。自分の内壁にゼリーがぶつかり、ビシャッ、と冷たい痛みが走り、引き裂かれたように苦しい。

 今まで、散々痛い目を見てきたが、この痛さは格別だ。


 ちなみに通常の力、内力に対する外力で殴られると、打たれたところが腫れたり、骨が折れたりする。

 ボディを打たれると、内臓が硬直してよじれるようになり、ひどく苦しい。おなかが痛い時のあの差し込みだ。これに対しては、無理矢理に、体を引き伸ばすのが利く。一瞬辛いが、凝りを伸ばすようにすると、瞬時に楽になる。実撃系の格闘家は、試合中にこれが出来る。

 頭だとこうは行かない。重いのをもらうと、一瞬に意識が無くなる。その時、視界が黒くなる場合と、白くなる場合があるが、この違いの理由はわからない。


 ちなみに、私が肉体でもらったダメージのベスト1は、股間への頭突きだ。

 これがまた、見事に急所にヒットした。みるみる睾丸が腫れあがる。

 幸い、稽古中だからまだ良かった。即時にタップしてうずくまった。ここでただ、無抵抗に苦しむことが許されるのは素人までだ。本職は、ここからが訓練。どんなに辛い状況でも、いや、あればこそ、自力でなんとかしなければならない。

 私は見る見る巨大化しながら、体の中へと入り込もうとする睾丸を、自分でひっつかんだ。なにせ今しも毛細血管がちぎれて腫れているのだ、触るだけで激痛だ。 

 それを我慢して、思い切り引っ掴まないといけない。そして外に伸ばして体内に入ってしまわないようにするのだ。吐き気がするほど苦しいが、中に入ってしまうとまっさきに吐いてしまいそうだ。

 睾丸の腫れ、引きむしる痛み、吐き気、それらと戦いながら、私はなんとか自力蘇生に至る事が出来た。

 痛みと怪我への対応力、それこそがある意味、もっとも効果的な自己防衛なのかもしれない。 


 ちなみに、うちの弟子は、この経験を繰り返す内に、自分の意志で睾丸を体内にしまうことができるようになった。考えてみれば、セックスの時はそうなのだから、耳を動かすようにそれも可能なのかもしれない。

 だが、そのために、睾丸を何度も腫らしたい人間、いるだろうか? ある空手家は、股間に蹴りをもらって神経が切れ、不能になってしまったそうだが。ブルルルル。
posted by 久遠 at 16:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | アウトロー通信
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